夢みる惑星

カルチャーをむさぼりながら空想で生きてる

”あたしたちの未来はきっと”

とんでもないものを読んでしまった。すべてのタイミングが合わさって、わたしのための本ではないかと思えた。(そう思わせるのは物書きさんの才能なのかもしれないけど)

 

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みなさん、長谷川町蔵さんの小説集”あたしたちの未来はきっと”は、このブログの読者さんが一人残らず読んでいただかなければいけません。そうみなさんと共有しなければ、と使命感に駆られるほどです!

 

 2010年、中学2年生のお楽しみ会で「少女時代」を踊るはずだった美少女たち。

光輝く将来を約束されていたかに見えた彼女たちを待ち受けていた現実とは。

東京の郊外・町田を舞台に、少女たちが時空を超えて運命を切り開く。

映画・音楽コラムの名手が初めて描く青春群青劇。

上記は裏表紙に書かれている文面ですが、ここでハッとした方もいらっしゃるかな。【少女時代】の4文字。わたしたちの永遠のヒーロー。作品では、かつて、わたしが彼女たちに投じた夢たちが入っていて、自分の中にしまい込めるものになっています。

いまでこそ韓国カルチャーに関する記事は久しく書いていませんが、このしがないブログを読んでくださってるみなさんの多くは”多感”で、”カルチャー好き”で、”K-POPを通ってきた”ってこと、知ってます!生活していくうえで関わる同世代の子たちとギャップを感じ続けているわたしたちを、まるごと肯定してくれる本です。わたしはこの本を読んだ後に、少女時代のPVを泣きながら再生し続けました。

 

ネタバレしないようにつらつらお話しするつもりですが、してしまいそうなので、この先はみなさんぜひぜひぜひぜひぜひぜひ読んでから!

 

長谷川町蔵さんは、高校2年生頃のわたしとアメリカ映画の距離を縮めてくれたエッセイやコラムを中心に活躍されている方(ヤングアダルトUSAは最高)で、初めてコラムを読んだときは、タヴィちゃんを知ったときと同じぐらい、インターネットの存在に感謝しました。

この小説が出たころ、わたしは読む時間がなくって、ついこの前友人に頼まれたエレファントカシマシの著書を買うついでに思い出し、素敵な装丁と洋書を思い出すペーパーバックな雰囲気に、大きな期待を寄せながらレジに向かいました。

 

10つの短編で構成された小説集でありながら、その10つを1作品として読み進めることができます。1編進んでは数ページ戻って確認しながら、お世辞にも勘が良いとは言えないわたしは、取りこぼさぬよう必死に”もしかして”と食らいつき読みました。コラムニストさんだからなのもあると思うのですが、文章から日常が透けて見えて、すらすら読みやすい文章で、”本を読む”ということがまったくつらくなかった。身近な単語がどんどん出てくるおかげですごく楽しかった!これを機に読書、始めようかな。

 

 

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作中では、舞台の町田とティーンエイジャーとポップカルチャーが混ざり合い、少女たちは、自らで自分を前に進めていきます。みんながすきなお笑い番組を「終わってる」と話す男女、エッチな動画を見て泣き出すバージン、Mac抱えてトラックを作るということ、相対性理論ザ・キュアー・・・すべてが私たちの身の回りのことで、あまりにもドンピシャ”世代”なフィクション、これこそいまを表すユースな小説。いまを生きるわたしたちとわたしたちを強くする音楽・映画の関係性を思い出す作品です。この作品に出てくる主人公たちとわたしはまったくの同い年だったのですが、わたしと作者である長谷川さんは同い年ではないのに、ここまで的確なのだ?と不思議でなりませんでした。誰しもみな、中学生だったことがあるからなのでしょうか。

 

さらに、坂元裕二脚本のドラマ”カルテット”の影響(というより、わたしよりもっと察しがいい人たちのレビューによる影響)で、わたしが最近ずっと考えている”並行宇宙”が深く絡みついて!カルテットで、そして坂元裕二作品で、人生は選択の連続と教わったばかりなのに。わたしたちは止まれないから選択を続けるし、選択する限り青春なんですね。最近ティーンエイジャーに固執しなくなったのは、ティーンを卒業する前に新宿シネマカリテで見た”God Help the girl”を見て、何歳だとしても自分は自由なのだ、と気づいたからだということを思い出した。

 

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そして、わたしの、美醜にとらわれている友人に読んでほしい。いまを生きる女の子たちは、さまざまな弊害を取っ払うために自己肯定の大切さをみんなで学ぶ必要があります。他人からの評価を基準にして痩せているのにダイエットをし続ける友人に、わたしたちはだれかの評価対象じゃなくって、自分のためにいるってこと、気づかせたい。伝えたいことを物語にできるのだから、言葉のプロの力って大きいですね。わたしが、直接的にしか言葉にできないことを、作品にメッセージを込められる人のモノを借りて、友人を救えちゃったらすごい。ドラマ”逃げるは恥だが役に立つ”で石田ゆり子さん演じるゆりちゃんの役の真理がつかめなかったみんなは、この本で呪いを解きましょう。ちなみに意味がうやむやなまま”フェミニスト”を名乗る子たちも読んでほしい。流行ってること自体とてもいいことなのに、このまま言葉だけ一人歩きしていくのは見てられません・・。

 

ここからは少しフォーカスをずらして、物語で欠かすことのできない”少女時代”について。

 

先日、友人と新大久保に韓国料理を食べに行き、店内に数台あるK-POPのMV垂れ流しテレビにて、少女時代”Lion Heart”のミュージックバンクでの公演を見ていて気づいた、”この子たちこれ以降カムバ*1してなくない?!”中高と狂うように彼女たちの活動を追っていたわたしは、大きな不安と焦りでたまらなくなりました。当時、韓国のインタビュー記事などで”女王帰還”などとタイトルづけられる彼女たちを眩しく、そして誇りのように思っていました。サムギョプサルでパンパンの胃をいたわりながら、帰りの電車の中で、ツイッター検索をかけ続けました。応援に区切りづけた大きな理由が、わたしがいなくても彼女たちは前に進んでくれるんだ、輝き続けるんだ!いう期待と確信に満ちたものだったからです。

いざ検索してみたら、それぞれやっぱり忙しくし続けていて、夏には8人でカムバックもするそうで、安心感から片っ端からMVを見続けた矢先、この本である。

 

やっぱり彼女たちは、わたしたちの夢であったし、この本がわたしの少女時代への思いを、もっと特別きれいにしてくれて、あのころ見ていた少女時代とは違う見方まで教えてくれた。そうだ、身近なアイドルじゃなくって、彼女たちを選んだのは、必然だったんだ!

彼女たちが、強くまっすぐ道を歩いていく姿に、自分自身を見ていた。憧れには、しっかり理由が基づいていたことを思い出した。男性アイドルファンからの敵視、驚異的なスケジュール、ネット民たちからの揚げ足取り‥さまざまな弊害に、正しく挑み続ける彼女たちのインタビューや番組でこぼす成熟された言葉は、わたしの人格形成に深く関わっていた。生きる上で大切な近道をたくさん教わっていた。なんだか、この本読んでからだと、ジェシカ脱退についても神話化してしまいそうなぐらい(笑)

 

中学3年生のころ、このMVが発表されて、パソコンが家になかったソシペン*2の友人を”高画質で見てほしい”という理由だけ家に呼んだことを思い出した。

 

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こんな決意に満ち溢れた顔で、世界に挑まんとしている彼女たちを見て、”なんて美しいんだ”と胸を打たれたことを覚えている。外見だけでない、常に彼女たちの姿勢に励まされていたのだ。米国デビューを果たした楽曲でもある”The Boys”は、英語版もリリースされている。当時、韓国特有の芸能文化<見えるラジオ>で、メンバーのひとりであるヒョヨンが”英語の発音が苦手でラップパートを何度も録り直した”というエピソードを話してくれた。笑い話として話している姿をYouTubeで見て、全然笑えなかったことを思い出した。こんな彼女たちを誰が笑えるかと思った。

プロデューサー諸々以前に、彼女たちは自分たちの力で、運命を切り開いていた。観客の中にわたしがいたっていなくたって、しっかり輝き続けていた。

 

そしてまたわたしたちも彼女たちとこの本の少女に倣うように、今を大切にするために、自分を守りながら、自分で未来を迎えに行くのだと思う。 

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*1:カムバックの意。新譜を出し活動すること

*2:少女時代ファン